論文の要旨
-
Org. Lett. 2017 published online
Structure Revision of Poecillastrin C and the Absolute Configuration of the β-Hydroxyaspartic Acid Residue
Irie R, Takada K, Ise Y, Ohtsuka S, Okada S, Gustafson K, Matsunaga S
-
Chondropsin/poecillastrin類は、ポリケタイド合成酵素(PKS)と非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)の混成により生合成されると考えられる化合物群で最大級のマクロライドであり、膜タンパク質V-ATPase阻害による強力な抗腫瘍活性を示す。しかし深海性カイメンの微量成分であることに加え、多くの不斉炭素を有する複雑な化学構造ゆえ平面構造のみの報告にとどまっており、その応用研究は進んでいない。また、天然物のNMR解析のみからでは、β-ヒドロキシアスパラギン酸残基のどちらのカルボキシ基がラクトンを形成しているか(1 または 2)を決定することが困難であった。
本研究では、天然物のラクトンをジオールに還元することで、1 と 2は区別可能なアミノ酸を与えることに着目した。大島新曽根産カイメンPoecillastra sp.から得られた主成分poecillastrin Cについて、まずMarfey法によりアミノ酸残基の絶対配置をD-threoと決定した後、ジオール由来の標品アミノ酸2種を化学合成してLC-MS分析を行ったところ、2 の訂正構造が正しいことが示された。同様の手法を用いて類縁化合物の構造訂正も行い、最小限のサンプル量(10-8 mol)で化学的に構造を確定することができた。